
目次
1.はじめに
2026年3月6日、私が発達障害を学べる貴重な作品として愛読していたカレー沢薫氏の『なおりはしないがましになる』(マンガワン連載)が、突然掲載終了となりました。
生きづらさを抱える私にとって、心の支えだった作品が突然消えてしまいました。
なぜ、読者も作者も望まない形で連載が終了しなければならなかったのか。その裏には、出版業界を揺るがす深刻な問題が隠れていました。
原因を調べると、小学館が運営する同アプリをめぐる「マンガワン事件」が関係しており、現在、100人を超える漫画家が作品引き上げを表明する事態に発展しています。
この記事では、小学館の漫画アプリ「マンガONE(通称:マンガワン)」で発生した通称「マンガワン事件」について、事件の経緯と「なぜここまで問題視されているのか」をQ&A形式でわかりやすく解説します。
今回の問題は
・性加害歴のある原作者の再起用
・編集部の被害者交渉関与
・漫画家100人以上の抗議的作品引き上げ
という複数の問題が重なり、現在「マンガワン事件」と呼ばれています。
2.マンガワン事件とは?小学館問題の経緯まとめ
小学館の漫画アプリ「マンガワン(MangaONE)」をめぐる一連の問題(通称「マンガワン事件」)は、2026年2月下旬に表面化した重大なコンプライアンス違反事案です。主に性加害歴のある原作者の再起用と編集部の不適切な関与が問題視されています。
①発端となった刑事事件と民事判決
漫画家・山本章一(本名:栗田和明、別ペンネーム:一路一)は、北海道の私立高校でデッサン講師を務めていた時期に、教え子(当時15歳から)の女子生徒に対し、長期間にわたり性的虐待を行ったと認定されました。
・2020年2月:児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)で逮捕・略式起訴 → 罰金30万円の略式命令。
・2026年2月20日:札幌地方裁判所が民事訴訟で山本に対し、被害女性への損害賠償として1,100万円の支払いを命じる判決を言い渡しました(被害者は重度のPTSDおよび解離性同一性障害を発症)。
なお、漫画原作者の性犯罪事件としては、
『アクタージュ act-age』原作者マツキタツヤ事件も大きな社会問題となりました。
②マンガワン編集部の対応の問題点
・同氏は当時『堕天作戦』(マンガワン連載中)で活動しており、刑事事件発覚後に同作は休載→2022年10月に正式終了。
・しかし終了からわずか2か月後(2022年12月)、山本氏は「一路一」という別ペンネームで『常人仮面』の原作者としてマンガワンに再起用されました。
・さらに、2021年の被害女性との和解協議に担当編集者がLINEグループに参加し、示談金150万円・連載再開中止要求撤回・性加害の口外禁止を条件とする公正証書作成を提案していた事実が判決文などから判明(和解は成立せず)。
③小学館・マンガワン編集部の対応
・2026年2月27日:『常人仮面』(マンガワン連載)の配信・単行本出荷を停止し、公式謝罪。「本来起用すべきではなかった」「確認体制に重大な瑕疵があった」と認めました。
・3月2日:社内調査の過程で別の問題が発覚。『星霜の心理士』の原作者・八ツ波樹が、2020年に強制わいせつ罪で有罪判決(懲役1年6ヶ月・執行猶予3年)を受けたマツキタツヤ(『アクタージュ act-age』原作者)と同一人物であることを公表。こちらも事実を把握した上で別名義で起用していたと説明。
・第三者委員会を設置し、起用プロセス・編集部の人権意識・和解関与の全容を調査する方針を表明。
④社会的影響
・日本漫画家協会が声明を発表し、業界全体の問題として調査と再発防止を要求。
・高橋留美子氏、島本和彦氏をはじめ、100人を超える漫画家がマンガワンからの作品引き上げを表明。『葬送のフリーレン』『めぞん一刻(新装版)』『らんま1/2』などの人気作が閲覧不能に。
・小学館漫画賞贈呈式の延期など、出版業界全体に深刻な波及が発生しています。
⑤まとめ
本件は、性加害・性搾取に対する出版社の責任、被害者への配慮の欠如、加害者の社会的更生と作品継続のバランス、編集部の隠蔽疑惑などが複合的に絡んだ問題として、現在も議論が続いています。
小学館は複数回の公式声明を出していますが、第三者委員会の調査結果が待たれる状況です。
マンガワン事件時系列表
児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)。罰金30万円の略式命令。
事件発覚後の休載を経て連載終了。
マンガワン編集部が同一人物と把握した上で再起用。
山本氏に対し、被害女性への損害賠償金1,100万円の支払いを命令。
判決内容と再起用の妥当性が問題化。編集部が瑕疵を認める。
『星霜の心理士』原作者も性犯罪歴のある別名義と公表。
『なおりはしないがましになる』等の人気作が閲覧不能に。
3.この時点での私の所感
もし上記の内容を「斜め読み」した場合、このような感想を抱かれるかもしれません。
「犯罪者が社会復帰することに何か問題があるのか?」と。
ここからは、この事件がなぜ大きな問題になっているのかをQ&A形式で整理します。
4.Q&A:5つの疑問で紐解くマンガワン事件
Q1.なぜ今回の件が大問題なの?過去に犯罪を起こした人の起用が問題視されているのはなぜ?
A1.被害者が未成年(当時15歳)であり、教育現場の権力関係を悪用した長期・残虐な性加害であった点
・民事判決(2026年2月20日・札幌地裁)で認定された行為は、教師と生徒という圧倒的な優位関係を悪用したもので、3年間にわたり性的虐待を繰り返し、被害女性に重度のPTSDおよび解離性同一性障害を発症させました。
・行為内容には、排泄物の強要、身体への落書き撮影、性的道具装着下での外出強要などが含まれ、裁判所も「最悪レベルの悪質性」を認定しています。
・こうした性被害の深刻さ・残虐さが、2026年の社会的な性犯罪に対する厳しい視線と相まって、単なる「過去の犯罪」として軽く扱えないと受け止められています。
A2.逮捕・罰金刑後も「わずか2か月」で別ペンネームによる再起用が行われた点
・2020年2月の逮捕・略式起訴(児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)、罰金30万円)で『堕天作戦』は休載→2022年10月正式終了。
・しかし終了からわずか2か月後(2022年12月)に、同一人物が「一路一」名義で『常人仮面』の原作者として新連載を開始。
・刑事罰を受けた直後に商業的に復帰させた判断が、「更生の機会」ではなく「被害者軽視・利益優先」と映り、コンプライアンスの欠如として強く非難されています。
A3.社会全体の性犯罪に対する意識変化と、企業の人権デューデリジェンス※責任の高まり
※企業が自社だけでなくサプライチェーンを含め、事業活動に関わる人権侵害リスクを特定・評価し、その防止・軽減・是正措置を講じ、その結果を公開・説明する一連の責任ある取り組みのこと
・近年、不同意性交等罪の改正や性的姿態撮影罪の新設など、性犯罪への法整備・社会認識が急速に厳格化しています。
・企業は「ビジネスと人権」行動指針のもと、人権侵害事案への対応が強く求められており、特に性被害者への配慮が不足すると、社会的制裁(ボイコット・信頼喪失)が大きくなります。
・本件では、編集部が「反省・更生を確認した」と主張する別のケース(『星霜の心理士』の原作者)も発覚しましたが、被害者不在の判断プロセスが「加害者優遇」と映り、業界全体の信頼を損なっています。
Q1.回答まとめ
犯罪歴を持つ人物の社会復帰自体は否定されるものではありません。しかし本件では、
・被害者の深刻な傷つきを軽視した対応
・編集部の積極的な関与・隠蔽疑惑
・商業的利益を優先した再起用判断
が複合的に重なり、「性加害を容認・隠蔽した企業体質」として受け止められたことが、通常の犯罪歴起用以上に強い反発を招いています。
小学館は第三者委員会を設置し調査を進めていますが、結果公表と具体的な再発防止策・被害者支援の姿勢が、今後の評価を左右する状況です。
Q2.なぜ漫画家たちは自分の作品を引き上げる(掲載終了させる)の?
A:「性加害を容認するようなプラットフォームには作品を置けない」という強い抗議の意思表示です。
・連帯の動き: 1人の抗議ではなく、100人以上の作家が連帯することで、出版社に対して体制の抜本的な改善を迫っています。
・作家のブランド保護: コンプライアンス意識の低いアプリに掲載され続けることが、作家自身の信頼に関わると判断したケースも多いです。
・読者への配慮: 被害者を軽視する運営体制を是認できないという、作家個人の倫理性に基づいた苦渋の決断と言えます。
Q3.私たち読者にできることは何?作品や作家を応援するには?
A:作家個人への応援と、プラットフォームへの意思表示を分けること。
・作品引き上げを決断した漫画家の方々のSNSをフォローし、支持を表明する。
・単行本を購入するなど、作家に直接利益が届く形での応援を検討する。
・問題のある運営体制に対しては、アンインストールや問い合わせ窓口を通じて意見を届ける。
Q4.今後、マンガワンや小学館の体制はどうなるの?
A:第三者委員会による調査と、再発防止策の策定が焦点となります。
・外部調査: 編集部がなぜ性加害の事実を知りながら別名義での起用を強行したのか、その隠蔽体質の有無が調査されます。
・信頼回復: 日本漫画家協会からの要求もあり、被害者支援のあり方や、業界全体での加害者起用に関するガイドライン作りが求められています。
Q5.「作品と作者は別」ではないの?作品に罪はある?
A:作品自体の価値と、それを提供・収益化するプラットフォームの倫理は切り離せなくなっています。
・「作品に罪はない」という葛藤: 優れた作品が加害者の手によるものであっても、作品自体の価値を認める声はあります。しかし、その作品を商業展開することで「加害者に利益(印税)が還元されること」や「加害者に発信力を与え続けること」が、被害者への二次加害になり得るという視点が重視されています。
・連載終了の影響: 今回の問題で最も悲劇的なのは、性加害とは無関係な他の作家たちの作品(『なおりはしないがましになる』など)までが、プラットフォームの不祥事によって掲載終了や引き上げに追い込まれている点です。
・問われる「場」の責任: 読者が作品を楽しむ「場」であるアプリや出版社が、人権侵害を軽視する姿勢を見せた場合、どんなに優れた作品であっても、そのプラットフォーム上で提供されること自体が批判の対象となってしまいます。
5.おわりに:情報に触れ、心と行動が変わる

①事件の評価
本件は単なる漫画アプリのトラブルではなく、
出版業界の人権意識とコンプライアンスが問われる事件となりました。
第三者委員会の調査結果が公表されれば、
マンガワン事件はさらに大きな議論を呼ぶ可能性があります。
②私の心情
痛ましい事件であり、企業責任が問われる社会的な問題でもある本件です。
内容を読み込むほど、言葉を失いました。
事件を何となく斜め読みすることのリスクを痛感しています。
では、この問題に私たちはどう向き合えばよいのでしょうか。
今まで、私の人生に不買運動という行動は存在しませんでした。
しかし本件を知ってしまうと、何かしらの行動が必要と感じています。
今、思い浮かぶのは小学館への不関与運動です。
本件は被害者への配慮と企業責任が問われる重大な社会問題です。
私自身、情報に触れたことでアプリのアンインストールを決断しましたが、読者の皆様もご自身の価値観に基づいて判断いただければ幸いです。
③おわりに
情報に触れ、心が変わり、行動が変わる。
多くの情報に触れすぎると、そのたびに心と行動に影響が生じる恐れがあります。
改めて情報とのかかわり方の難しさを感じています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました🐻
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